廃棄物処理法 ⑦ 行政庁の裁量
お疲れ様です。行政書士の亀井宏紀です。
さて、廃棄物処理法の続きです。
前回は、許可の規準について見てきました。
廃棄物処理法の14条5項を再度みてみると
「 都道府県知事は、第一項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。」
とあります。この条文から問題となるのが、要件を満たした時になお不許可とする効果裁量が、行政庁にあるかどうかということです。
「適合している場合には許可をしなければならない」とはなっていないので、よくわかりません。
ここで、裁量のことについて考える前に、前提知識の整理として憲法の話をします。
憲法22条には、
「第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。」
とあります。
第1項の「職業選択の自由を有する」というのが22条の肝で、この特定の職業を営む自由のことを、営業の自由といいます。
憲法にはこれを保障する直接の規定はありませんが、職業選択の自由を保障しても、営業の自由を認めなければ、職業選択の自由の保障に意味がないことを理由として、営業の自由は憲法22条により保障されると解されています。
つまり、私たちは、憲法上、営業の自由が認められているので、どこでどんな営業を行っても一応よいことにはなっています。
でも、みんなが好き勝手に営業を行ったら、いろいろ問題が発生するので、公共の福祉の観点から、ある程度の制約もうけますよ、というのが、憲法の考え方です。
その制約の中の、許可というものは、一般的に禁止されていることを解除することをいいます。それにより、許可を受けた者は、それまで禁止されていた行為を適法に行うことができるようになります。
そして、許可の判断を行うのは一般的には、行政庁ですから、その判断にはおのずと、裁量というものがあります。この裁量についての幅が小さいものを、警察許可と言います。
なぜ「警察」という言葉がついているのかですが、これは公共の安全、秩序の維持という警察目的のために、制約していたものを解除する場合の許可だからです。
つまり、制約目的は、公共の安全、秩序の維持だけですから、これ以外での制約はできない、よって、行政庁の裁量の幅も小さくなる、という理屈です。
裁量についての前提知識の確認が長くなりました。
廃棄物処理法の許可についてですが、憲法の営業の自由があるので、、原則、誰でも廃棄物に関する仕事ができる
⇒しかし、公共の福祉の制約
⇒最も、この制約は、公共の安全、秩序の維持という警察目的
⇒よって、行政庁の裁量の幅は小さくなる
⇒法律で定められた許可要件を満たせば、許可がもらえる
という理屈が一応できます。
ちなみに、廃棄物処理法の管轄官庁である、環境省も
「平成12年9月29日 の 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長
産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理 施設の許可事務の取扱いについて(通知)」の中で
「第1 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業の許可について
2.許可の性質 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「法」という )
第 14条第5項及び第10項並びに第14条の4第5項及び第10項は、申請者が基準に適合する 施設及び能力を有し、かつ欠格要件に該当しない場合には、必ず許可をしなければなら ないものと解されており、法の定める要件に適合する場合においても、なお都道府県知 事に対して 許可を与えるか否かについての裁量権を与えられているものではないこと」
としており、裁量権はないことをいっています。
結論
廃棄物処理法においての許可は、要件を満たせば、許可はもらえる
(もっとも、その要件を満たすのが、しんどいんですが・・・)
次回に続きます。
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