同時死亡の推定

お疲れ様です。行政書士の亀井宏紀です。

さて、民法882条に、「相続は、死亡によって開始する」とあります。相続するのは、相続人ですが、あたりまえといえばあたりまえですが相続人は相続の開始時に生存していることが前提となっています。したがって、同一の事故などで被相続人(相続財産を渡す側の人)と相続人が死亡した場合、どう対応するのかが問題となる場面があります。
 例えば、夫と妻、その間の子供、夫の父親が存在するケースとして、夫と子供が飛行機事故で死亡した場合を考えてみます。

まず、夫が子供より先に死亡していれば、夫の財産は妻と子供が相続し、次に子供が死亡したことにより、子供の財産は、妻が相続することになり、結局この場合は、財産はすべて妻が相続するということになります。

次に、子供が夫より先に死亡していた場合、子供の財産を夫と妻が相続し、その後に夫が死亡したことにより、夫の財産を妻と、夫の父親が相続することになります。

このように、家族の中で誰が先に死亡したのかが、相続の関係では非常に重要になってきます。
しかし、飛行機事故のような場合は、飛行機が墜落して、おそらくは一瞬で飛行機の乗客が死亡すると思われますし、少しの間生存していたとしても、救助に向かった頃には、すでに死亡していて、誰がどの順番で死亡したのかを確認することは、ほぼ不可能だと思われます。

そこで民法は、このようなケースの場合に、「同時死亡の推定」という規定を置いています。
内容は、死亡したことが確実である数人の間において、1人の死亡が他の者の死亡後なお生存していたことが明らかでないときは、同時に死亡したものと推定する、としています。つまり、今回の飛行機事故ケースのような場合は、夫も子供も同時に死亡したと推定するというものです。具体的な相続としては、夫と子供は死亡しているととらえるので、お互いに相続人としての立場にはならず、子供の財産は妻が、夫の財産は妻と夫の父が相続するということになります。
今回取り上げた飛行機事故のようなケースはまれかもしれませんが、車の交通事故のような場合は、乗っていた方が同時に死亡するケースは考えられますので、まれとは言えないことも覚えておいてください。

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