電車の遅延

お疲れ様です。行政書士の亀井宏紀です。

さて、先日、友人と列車に乗っているときに「電車が遅延します」とのアナウンスが流れました。友人が「電車が遅れたら、何らかの補償を請求できるのかな?」とつぶやいてました。

何らかの請求をしようとした場合、請求方法は、契約に基づくものか、不法行為に基づくものかに大きく分かれます。
法律を勉強した方なら、電車に乗る=旅客運送契約を鉄道会社とした上で、電車に乗っているとの認識があると思いますが、一般の方は、特になんの意識もなく、電車に乗っていると思います。

では契約に基づいて請求できるかが問題となりますが、ここでの鉄道会社との契約、旅客運送契約は、お客様ひとりひとりと個別に鉄道会社が契約書を用いて行っているものではなく、鉄道運送約款という、約款に基づいて、電車を利用するなら、鉄道会社と契約をしたとの認識で行われています。

約款とは、たくさんの取引を画一的に処理するために、あらかじめ定型化された契約条項のことで、保険の約款や、携帯電話の約款などはご覧になった方も多いと思います。
そして、鉄道運送約款には、鉄道会社は電車の遅延による損害を負わない旨の規定が置かれていることがほとんどです。
なぜ、電車の遅延による損害を負わない旨の規定が置かれているのかを考えると、仮に電車の遅延による損害が発生し、個別にその損害の賠償を認めてしまうと、鉄道会社は、たくさんのお客様から損害賠償の請求を受けることとなってしまい、その賠償分も運賃に上乗せしないといけなくなるからです。
片道200円で乗れてた電車が、片道1000円にも、2000円にもなってしまう可能性があります。
実際に、電車の遅延に基づく損害賠償請求を行った裁判例がありますが、その中で裁判所は、
「鉄道事業者は不特定多数の旅客を有料で輸送するものであり,鉄道事業者が列車の遅延について通常の債務不履行責任を負うものとすれば,損害賠償額は膨大な額となり得ることが予想され,大量の旅客を低価で運送することが事業上困難となるのであり,列車の遅延について上記のような免責規定を設けることには相応の合理性を認めることができる。」(東京地方裁判所 平18年9月29日の判決)として、約款による電車の遅延があっても損害は追わない旨の規定を認めています。
このようなことから、電車が遅延しても、損害は請求できないので、「電車は遅れる可能性がある乗り物」と認識したうえで、約束事がある場合は、早めの電車に乗ったほうがいいですね。

以上、ちょっとした契約のお話でした。
P・S 特急料金を払って電車に乗ったのに、遅延した場合、JRなどでは「特急・急行列車が、到着時刻より2時間以上遅れた場合は、特急・急行料金の全額をお返しします。」と約款にはあるようですね。
まあ、特急料金は、目的地に早く到着したいがために、わざわざ上乗せした料金ですから、当然といえば当然でしょうか。参考までに。

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