私の分の賃料債権を渡してくれ!

お疲れ様です。行政書士の亀井宏紀です。

さて、前回、銀行預金は、相続財産に含まれるので、遺産分割の対象になる旨を案内しました。
民法899条 「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する」の例外として、可分債権の銀行預金については、最高裁判所の判例にて、認められたものでした (ちなみに、最高裁判所の裁判の判決文だけを「判例」といいます。他の地方裁判所や高等裁判所の判決文は、「裁判例」として紹介されます)。

では、他の可分債権についてはどうでしょう。
判例で取り上げられたものとして、不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権があります。

相続財産として、不動産のマンションがあったとしましょう。不動産であるマンション自体は、相続財産として、遺言書がなければ、相続人全員で、遺産分割協議を行って、帰属を決めなくてはなりません。
もっとも、不動産のマンションが賃貸に出されていた場合、毎月の賃料債権が発生します。この発生する賃料債権自体も、相続財産に含まれるのかが、問題となりました。
最高裁判所の判例は、淡々と、「不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産であって、各協同相続人その相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は、後になされた遺産分割の影響を受けない」としました。
すなわち、あくまで相続財産は、マンション自体であって、そのマンション自体から生み出される賃料債権は、相続財産ではなく、おのおのの相続人に分割された債権であるということになります。
よって、このことから、おのおのの相続人が、「私の分の、賃料債権を渡してくれ!」と請求できるということになります。
もっとも、賃料債権は、不動産から生ずる債権ですので、相続財産である不動産が確定的に、共同相続人の誰かに帰属すれば、それ以降はその帰属した相続人に賃料もいくことになるでしょうから、「私の分の、賃料債権を渡してくれ!」と言えるのは、遺産分割協議が完了するまでということになります。
場合によっては、ほんのちょっとの間かもしれませんね。

 

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ