日経新聞『留学生、大学・院卒後に年収300万円以上で在留可能に』との記事について。

お疲れ様です。行政書士の亀井宏紀です。

さて、9/6日付けの日本経済新聞にて、
『留学生、大学・院卒後に年収300万円以上で在留可能に』との記事が出ました。

『日本の大学または大学院の卒業後、年収300万円以上で日本語を使う職場で働く場合に限り、業種や分野を制限せずに外国人の在留を認める。』というもので、

『日本語を使う職場で働く場合に限り』という制限は入っていますが、
原則、日本の大学を卒業した外国からの留学生は、日本に引き続き在留し、働くことができるというわけです。

この施策は、日本の入国管理行政にとって、まさに『開国』ともいえるものでないかと、私は思っております。

実は、少し前にこのことについての布石はありました。
先月の8/21に、菅官房長官が、講演にて、『日本の大学を卒業した志望者の大部分が何らかの形で就職できる制度を作るため、業種の幅をさらに広げるような在留資格をつくりたい』と述べています。

菅官房長官は、政府の影のドンですから、この方が言ったことは、そのまま政府が行う予定のことと認識して間違いありません。
今の政府は、オリンピックが始まるまでに、なんとか外国人に関しての施策を実行しようと、来春までに「特定技能(仮称)」
の制度の導入を目指したりしていますが、それ以上に、今回の大学卒の外国人に関する在留資格のインパクトは大きいです。

今回導入される在留資格の制度を仮に、「大卒者の特定活動(仮称)」とした場合、何がすごいのかというと、
大卒の留学生が、基本、フリーパスで、日本の会社などで働けるということです。

イメージとしては、日本の大学を卒業した、日本の学生が、新卒として会社に入社する場合と同様に、外国人留学生も、入社できるということです。
日本の会社が新卒を採用する場合、社内の選考基準に基づいて採用します。採用したいと思ったら、その学生を採用できます(もちろん、学生側の意思は必要ですが)。
しかし、外国人留学生を、日本の会社が採用したいと考えた場合、社内の選考基準に基づいて採用すると判断しても、それだけでは、実際に雇用できないのです。
その会社で採用後に、外国人留学生が行う仕事が、大学で学んできたことと、関連しないと、外国人の在留資格が取得できないということがあります。

在留資格の「技術・人文知識・国際業務」というものですが、多くの外国人留学生は、日本に残って仕事をしたいと考えた場合、あくまで自分が学んできたことと関連する分野でしか、就労ができないということがありました。

しかし、今回の「大卒者の特定活動(仮称)」では、『業種や分野を制限せず』とのことですので、この関連性という要件がなくなります。

つまり、日本の会社は、仕事の分野を制限せず、外国人留学生を採用できるので、日本人の新卒採用のような採用活動ができるということになります。

ここで、「大卒者の特定活動(仮称)」には、年収300万円以上の保証が必要ではありますが、新卒採用と同様に考えるのであれば、大きな問題ではありません。

年収300万円のイメージですが、毎月の給料が、月額20万円として、年間では240万円。そして、夏と冬のボーナスが、各月額の2か月分とすると、各40万円×2回で、80万円。合計で320万円と、300万円は余裕で超えます。

現在の新卒者の平均でも、20万円はゆうに超えてますから、会社が新卒者と同様の給与水準を守るのであれば、年収要件は、大きな問題とはなりません。

もう1つの要件『日本語を使う職場で働く場合に限り』の詳細はまだわかりませんが、日本にある普通の会社、企業は、特殊な場合を除き、「日本語を使う職場」になると思います。

この新制度、「大卒者の特定活動(仮称)」は、来春からスタート予定ですが、一番効果が大きいのは、外国人留学生を採用する企業側が、選考過程において、日本人、外国人の隔てなく、優秀な人材を採用することができるようになるということではないかと思います。
今までは、優秀な外国人留学生だったとしても、職種の関連性がないと、企業側も採用できないということがありました。
しかし、今後は、このようなことがなくなります。

現在、海外から日本の4年制大学に留学している者だけでも、平成29年5月のデータで、およそ8万人います。
各学年でも、1学年2万人です。
これらの数だけの人材が、今後、日本人の新卒者と同様に、採用することができます。

まさに、日本の入国管理行政にとっての、『開国』と、呼ぶにふさわしい出来事だと、私は、感じています。

 

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