「いっしんせんぞくけん」その①

相続の場面において、「一身専属権(いっしんせんぞくけん)」という、相続財産に含まれないものがあります。

通常、お亡くなりになった方の財産は、相続財産として、原則すべて、相続人に承継されます。

最も、相続人に相続させるのが、ふさわしくない、適当でないものとして、「一身専属権」というものが設けられています。

民法896条に
「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」

と明記されており、「ただし」以下が、「一身専属権」と言われているものです。

では、一身専属権とはどういったものかというと、個人の人格・才能や個人としての法的地位と密接不可分の関係にあるために、他人による権利行使・義務の履行を認めるのが不適当な権利義務と言われています。

ちょっとここで確認ですが、相続財産という時、お金や物だけでなく、権利義務という目に見えないものも、亡くなった方から相続人に引き継がれることは、覚えておいてください。

例えば、亡くなった方の名義で、賃貸マンションを借りていたという場合、もし、マンションを借りるという権利が、遺された家族に引き継がれなければ、その家族は出ていかないといけないので、このマンションを借りる権利という財産も、引き継がれるということです。

では、相続されない財産である一身専属権の具体例はというと、よく民法の教科書などで書かれているのが、亡くなった方が有名な画家で、その画家の先生に、自分の絵を描いてもらう約束をしていたが、先生が亡くなったので、絵を描いてもらえなくなったようなケースです。これは、その有名な画家の先生に絵を描いてもらいたいわけであって、相続人の方に絵を描いてもらいたいわけではないので、相続財産として、引き継がせるのは妥当ではない、というか意味がないですよね。

これはレアケースとしても、よくあるのが、年金受給権です。
年金は、その方が、生前に保険料を支払って、受給年齢になったら、もらえるという、その人の法的地位と密接不可分の関係にあるもので、相続人が、亡くなった方の年金受給権を引き継ぐというのは、妥当ではないということです。

この他のにも、一身専属権はいろいろありますが、目安としては、亡くなった方固有の権利関係は、一身専属権に含まれるものが多いです。

亡くなった方の年金を引き継いでもらうことは、できませんので、覚えておいてください。

一身専属権の続きとして、明日は生命保険について、お話したいと思います。

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