私の分の銀行預金を渡してくれ!
お疲れ様です。行政書士の亀井宏紀です。
さて、相続についてですが、民法898条に「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」とあります。そして、民法899条には、「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する」とあります。
遺言書がない場合、相続財産については、遺産分割の対象となり、相続人全員の協議で相続財産の帰属を決めなくてはなりません。
最も、相続財産ではないものについては、民法899条により、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継するとあるので、遺産分割なしに、権利である債権を受け取ることができます。
債権の中の、可分債権(分けることができる債権)は、相続分に応じて相続開始と同時に法律上当然に共同相続人に分割されることになります。
可分債権の例としては、預金債権があります。銀行に預けている預金のことですね。
民法の条文どおりに考えると、亡くなった方の銀行預金は可分債権なので、遺産分割の協議なしに、相続人のものになります。
相続人の中の一人が、自分の分だけの預金を、降ろさしてくれと、銀行に請求ができそうです。
以前は、このことを根拠に、遺産分割なしに、相続人の一人が個別に銀行と交渉していたこともあったようです。
確かに、銀行の預金は、法律的には、銀行に対する消費貸借契約に基づくもので、債権と言えます。
しかし、預金の本質は、引き出した後は金銭と同じであり、この金銭は、遺産分割の時には、相続人同士の財産の分割時に調整として活用するのに便宜なものであって、本来は相続財産に入れたほうが都合がいいものと言えます。
銀行実務でも、このような取扱にしているのが、ほとんどの状況でした。
このような状況のなか、平成28年12月19日に最高裁判所にて、銀行預金も遺産分割の対象となるとの判例が出ました。
これにより、法的な取扱としても、銀行預金は、相続財産として、遺産分割の対象となることになりました。
よって、これからは、銀行に対して相続人の一人が、「私の分の銀行預金を渡してくれ!」と言っても、預金は降ろせないことになりました。
この、銀行預金が、相続財産に含まれることが確定したことは、相続において、大きな出来事だと思います。
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