刑法はありません
お疲れ様です。行政書士の亀井宏紀です。
さて、先日、入管業務を手掛けている著名な弁護士の先生の研修を受講してきました。
研修自体は、非常にレベルも高く、さすがに長年、入管業務を手掛けているだけあり、勉強になったことが多かった内容でした。
研修の中で、いくつか強調されていたポイントがありましたが、その中で入管法の罰則規定についてがありました。
例えば、入管法 第七十三条の二 に規定されている不法就労助長罪などです。
犯罪ですので、当然、構成要件が条文に示されています。今回の研修の講師が、弁護士の先生ですので、当然、
「このような場合に、不法就労助長罪の構成要件に該当する」と説明します。
ここで、私は、ふと思いました。
私は、行政書士になる前から刑法の勉強はしていたので、なんの違和感もなく先生のお話を聞いていましたが、
そういえば、行政書士試験の科目の中に、「刑法」はなかったぞ、と思いだしました。
研修後、知り合いの行政書士の先生に、
「研修の中で弁護士の先生が、犯罪の構成要件について話されてましたけど、わかりました?」
と聞くと
「構成要件って、何ですか?」
との返答がやはりありました。
入管法の罰則規定についての話の中で、故意や過失についても話されてましたが、
知り合いの行政書士の先生に再度聞いてみても、何それ?的な感じでした。
研修講師の先生が、研修の中でしきりに、外国人を雇っている、もしくは雇う予定の中小企業に
外国人雇用はいろいろな問題があり難しいので、行政書士がコンサルティングを行っていくのがよいと
言われてました。
しかし、行政書士試験には、刑法の受験科目はありません。
基本、受験勉強は、出題科目を中心に勉強しているはずですので、こういった場合に犯罪が成立するという刑法を、行政書士の多くは、勉強していない可能性が高いと思いました。
入管法 不法就労助長罪等の第七十三条の二 2項には
「ただし、過失のないときは、この限りでない。」
と、過失の規定があります。
過失という言葉自体は日本語ですが、法律の場合の過失について、その定義は日常用語とは異なります。
過失とは、ある事実を認識・予見することができたにもかかわらず、注意を怠って認識・予見しなかった心理状態、あるいは結果の回避が可能だったにもかかわらず、回避するための行為を怠ったこと、とされています。
つまり、ある事実について、予見可能性に基づく予見義務違反、結果回避可能性に基づく結果回避義務違反があたことが過失となります。
第七十三条の二 2項の、「ただし、過失のないときは、この限りでない。」
をお客様であるクライアントに説明する際には、ここでの過失は、
予見可能性に基づく予見義務違反、結果回避可能性に基づく結果回避義務違反のことです、
と言えなければならないということを説明しないといけません。
入管法を扱っている行政書士に、なにかお願いする場合には
『刑法は、勉強したことありますか?』
と、聞いてみるのがいいかもしれません。
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