「いっしんせんぞくけん」その②
「一身専属権とは、個人の人格・才能や個人としての法的地位と密接不可分の関係にあるために、他人による権利行使・義務の履行を認めるのが不適当な権利義務」ということを、前回お話しました。
この一身専属権との関係で、ちょこっとややこしいのが、生命保険金です。
生命保険金、一般的には、生命保険といわれているものですが、被保険者の死亡によって受取人に生命保険金が支払われます。
生命保険金には、受取人が2パターンあり、受取人が被保険者本人となる場合と、配偶者や子供などの相続人の中の特定の者がなる場合です。
あれ、自分の生命保険なのに、死んだ時に受取人が自分っておかしいと思うかもしれませんが、生命保険の種類によっては、貯蓄型の生命保険もあるので、受取人が自分(被保険者)という場合も多くあります。
この被保険者が受取人の場合、被保険者の死亡により相続人が受取人としての地位を引き継ぐので、生命保険金は相続財産となります。
もっとも、受取人が、配偶者や子供などの相続人の中の特定の者である場合には、これらの人が、保険契約という、相続とは別の理由により生命保険金を取得することになるので、生命保険金は相続財産には入らないということになります。
「一身専属権とは個人としての法的地位と密接不可分の関係」なので、受取人が、保険契約という法的地位と密接不可分の関係にあるので、生命保険金は相続財産にはならず、受取人は、他の相続人に分ける必要なく、すべて生命保険金をもらえるということになります。
しかし、生命保険金って、そもそもの額が大きいですよね。何千万円、場合によっては、何億円という場合もあります。
例えば、相続人が3人いて、相続財産は、3000万円、割合は同じとすると、一人1000万円が自己がもらえる相続財産です。
この時に、生命保険金が別に3000万円あり、相続人の中の一人が受取人になっているような場合、いくら生命保険金は、相続財産に入らないからといっても、受取人となっている相続人は、相続財産とは別に、相続財産の全体額と同じだけを受け取ることになり、あまりに不公平と感じるような場合もあると思います。
このような場合は、特別受益として、生命保険金が相続財産に組み込まれる場合があります。
もっとも、どれだけの割合があれば生命保険金が、相続財産に組みこまれるのか、明確な指標があるわけではなく、裁判例でも、いろいろな場合があります。
まあ、一般的ににて、あまりに不公平とみられるような場合は、生命保険金が相続財産に組み込まれる場合があることは、覚えておいてください。
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